新館長ご挨拶

2013.5.7

  高戸先生より医学図書館館長就任のご挨拶をいただきました。
 その他にも図書館スタッフからの質問や、学生さんへのメッセージなど盛り沢山です。


Q 医学図書館館長就任のご挨拶と抱負をお願いします。
A 平成25年4月から図書館長に就任した高戸です。近年の情報技術の進歩に伴い図書館のあり方も変化し、蔵書を保管したり静かな勉学の場を提供したりするという従来の機能に加えて、情報化社会における膨大な情報量の中から効率よく必要な情報を提供する窓口としての役割も求められるようになってきています。今後もその傾向は強まっていくと思いますが、時代の流れに合わせて進化していく図書館にしたいと思っています。それと同時に、昔ながらの図書館としての役割である知の蓄積を大切に継承しつつ、大学の責務である次世代の人材育成に貢献していく所存です。

Q 先生の研究分野についてご紹介ください。
A 私の臨床の専門は顎口腔外科といって、口唇口蓋裂を始めとする先天的、あるいは腫瘍や外傷後の後天的口腔顎顔面変形の治療、舌がんを始めとする口腔内の腫瘍の治療や、顔の変形や噛み合わせの異常である顎変形症の治療を専門にしています。研究としては組織再生の研究、具体的には顎顔面領域における骨再生や軟骨再生の研究をしています。京大の山中先生がiPS細胞でノーベル賞を受賞されて再生医療への注目が高まっていますが、再生医療の歴史は意外と古く、1970年代にまで遡ります。1993年には、ヒトの耳の形をした再生軟骨がマウスの背中に移植された写真が世界のマスコミで広く取り上げられ、再生医療を一躍有名にしました。しかし、臨床で使える組織を体外で作製するのは非常に困難です。実際、彼らの報告から20年たった今でも、本邦で薬事承認を受けた再生医療製品は、再生表皮と、限局した軟骨欠損に対する再生軟骨のみです。私たちは、臨床でニーズの高い、比較的大きな形のある組織の再生を目指しています。
骨再生に関しては、複雑な顎顔面形態も容易に再現可能な人工骨の作製ができるようになりました。軟骨に関しても、患者自身の細胞とポリマー足場素材を組み合わせて、形と硬さを有するインプラント型再生軟骨の開発に成功し、現在、東大病院顎口腔外科で自主臨床研究を行っています。

Q 医学の道へ進まれたきっかけは?
A 若い時から、こどもが大好きで、人類の宝とも言えるこどもを助ける仕事をしたいと願っていました。医師になってからは、カナダのこども病院を含めて3か所のこども病院に5年間勤務しました。
いつも、こどもの笑顔を見ることが最大の楽しみでした。最近、会議において、32歳の官庁の方が、『3歳の時にこども病院で先生に手術をしてもらいました。』と挨拶に来られ、驚くとともに大変嬉しく思いました。

Q 先生が気分転換や息抜きにされている事があったら教えて下さい。
A 臨床も研究も辛いことも多いですが、両方とも大変面白くて、両者に従事することが互いに新鮮で気分転換と息抜きになります。臨床に専念しつつ研究に目を向け、研究に専念しつつ臨床に従事することが相互の刺激になっていると思います。常に、幅広い興味を持つことが、エネルギーを保つことに繋がっているのでしょう。

Q 医学生に学術書以外でぜひ読んで欲しい本はありますか?
A お薦めの本は選びきれないほどありますが、W. オスラー「平静の心」柳田邦男「犠牲」星野一正「医療の倫理」日野原重明「道をてらす光−私が学んだ人と言葉」利根川進、立花隆「精神と物質」などでしょうか。有吉佐和子「華岡青洲の妻」は、現代の医療倫理にはそぐわないのですが、心揺さぶられる読み物です。時間的に余裕がある学生時代に、医学分野も含めてたくさんの本を読んで、感性豊かな広い視野を持った医者になっていただきたいと思います。

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先生お薦めの本に、学内の所蔵へリンクをはっています、ぜひご利用ください
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Q 最後に、図書館を利用する学生達にメッセージをお願いします。
A 学生時代は勉強だけでなく、夢と目標をもって色々な経験をして、有意義な学生生活を送って欲しいと思います。とはいっても、将来の医師あるいは研究者として、必要な知識は習得していかなければなりません。そのためにも、是非図書館をうまく活用していただきたと思います。最近、医学図書館が改築されて使いやすくなりましたが、利用者のニーズに合わせて今後も対応していきたいと思っています。ご意見やご要望などがありましたら、ご遠慮なく図書館職員にお伝えください。